10.価格設定

10.価格設定
 
  1. 価格の役割
    1. 品質推定機能
    2. プレステージ機能
 
  1. コスト志向型価格設定
    1. コスト・プラス法
    2. 損益分岐点分析による価格設定法
  2. 競争志向型価格設定
    1. 市場価格追随法
    2. プライスリーダー追随法
    3. 慣習価格に基づく価格設定法
  3. 需要志向型価格設定
  4. その他の価格設定
    1. 端数価格
    2. 威光価格
    3. 複数製品の価格設定
      1. プライスライニング価格
      2. 抱き合わせ価格
      3. キャプティブ価格
 
価格とは製品の対価として請求される金額であり、価格は製品の判断基準になるという品質推定機能プレステージや社会的地位を表すプレステージ機能という二つの役割を果たす。基本的に価格を設定するときには、製品のコスト、競争、顧客の需要を知るべきである。また価格の下限はコスト、価格の上限は、該当製品に対する消費者の知覚価値であるとされる。ここでメーカーなら競合ブランドの価格、小売店なら競合店の価格を考慮する。
価格の設定方法さらに詳しく3つに分類される。コスト志向型価格設定、競争志向型価格設定、需要志向型価格設定の三つである。
  主な価格設定の一つ目のコスト志向型価格設定とは、コストに基づいて価格を算出するもので、比較的単純な価格設定の方法でああり、コストに目標とする利益を上乗せして価格を設定する。ここでのコストとは、製品の開発・生産、流通、販売促進にかかる諸費用である。コスト志向価格設定は、コスト・プラス法損益分岐点分析による価格設定法に分けられる。
 コスト・プラス法とは、製品1単位あたりのコストに、ある一定の利益を加えたものを価格として設定する方法である。日々コストが変動するような製品や、製品価格をいくらに設定すべきかわからない導入段階においてよく用いられる。注文生産品や公益性の強いサービス産業の価格決定法として適している。コストプラス法における価格算出方法は以下のようになる。
製品原価=1個あたりの変動費固定費見込み販売個数
また値入価格(=販売価格)は以下のようになる
値入価格=製造原価(1-希望利益率)
一方で、コスト・プラス法の問題点として、いかなる製品カテゴリーに対しても共通の基準でコストを算出しがちであり、各カテゴリーにおける消費者の価格態度の違いを考慮しておらず、消費者の価格感度を無視している点があると言える。
 損益分岐点分析による価格設定法はコストと販売価格があらかじめ与えられているときに損益分岐点上の販売数量を算出する方法である。価格、コスト、および販売数量の関係を分析hしながら、最初に設定した価格を調整していき、妥当な価格を最終的に決定する。損益分岐点販売する量は以下の式で求めることができる。
損益分岐点販売数量=固定費(価格ー製品1単位あたりの変動費)
 
主な価格設定の二つ目に競争志向型価格設定は、市場価格追随法、プライスリーダー追随法、慣習価格に基づく価格設定方法の三つがある。
 市場価格追随法では現在の市場価格を重視し、その価格帯の中で大幅に上下しない価格を設定する方法である。実勢閣下うに基準を置き、面倒なコスト計算や需要の分析をする必要もなく簡便であるが、主体性や戦略性がない。
 競争志向価格設定の二つ目にプライスリーダー追随法は、業界を先導するリーダー企業の価格に従い価格設定をする方法である。価格弾力性の高い市場であれば戦略的に低めの価格設定をして攻め込むこともできるが、リーダー企業は販売力も多くコスト対応力もあるため、逆襲される可能性もある。ビールなどがこれに該当する。
 競争志向価格設定の三つ目に慣習価格に基づく価格設定法では、社会習慣的に決まっている価格を基準として価格を設定する方法である。業界の慣習価格が支配的で消費者にも定着している場合、低価格設定しても販売数が伸びない傾向にある。ペットボトル飲料などはこれに該当する。
主な価格設定の最後に消費者心理を考慮した需要志向型価格設定がある。需要志向価格設定では消費者が製品にどのくらい価値を置くのかを把握し、消費者のベネフィットについての知覚に基づく価格を設定する。
その他の価格設定法として、端数価格や威光価格、複数製品の価格設定がある。まず端数価格は消費者の感じる台割効果を利用したものであり、9や8を伴った価格を最大限に引き下げられたものとして感じる傾向があることを利用している。また威光価格は品質の高さやステータスを訴求するために意図的に高く設定された価格である。これはブランド力が強い場合や消費者の情報が少ない場合に有効である。さらに複数の製品を販売する企業は、取扱製品全体で利益が最大となるように価格を設定することがある。その方法として、プライス・ライニング、抱き合わせ価格、キャプティブ価格がある。プライスライニングとは、価格帯のことで、製品ラインのランクに応じて多段階的に価格を設定する方法である。また抱き合わせ価格とは複数の製品やサービスを組み合わせて、単品で買うよりも安い価格を設定する方法である。さらにキャプティブ価格とは種タオなる製品の価格を安く設定し購入させる一方で、付随製品の価格を相対的に高く設定して利益を獲得する価格設定の方法である。種となる製品を安く設定することで、消費者へのアピールとなり、購入者がそのまま固定客となる。
このように企業は様々な戦略から、意図的に価格を決定している。