6.製品概念

6.製品概念
 
  1. マーケティングにおける製品
  2. 製品概念(製品レベル)
    1. コトラーの製品概念・製品構造
      1. 中核ベネフィット
      2. 製品の形態
      3. 付随サービス
    2. レビットの製品概念・製品レベル
      1. 製品レベルと顧客価値
        1. 中核ベネフィット
        2. 基本製品
        3. 期待製品
        4. 拡張製品
        5. 潜在製品
  3. 製品分類
    1. 製品分類
      1. 有形財...変動性と消滅性なし
        1. 耐久財...複数回の使用に耐えうる(家電、自動車)
        2. 非耐久財...1~数回の使用で消耗される(食料品、日用品)
      2. 無形材...変動性と消滅性あり(飲食、美容院、旅行)
    2. 購買習慣による製品分類と販売促進
      1. 最寄品
      2. 買回品
      3. 専門品
  4. 製品ミックス
    1. 製品ライン
      1. 製品ラインの幅
      2. 製品ラインの深さ
    2. 製品ミックスを拡張する方法
      1. ライン・ストレッチング
      2. ライン・フィリング
    3. 製品ミックスを拡張することの強み・弱み
      1. 強み
        1. 幅広い顧客への対応が可能になる
        2. 規模の経済性を享受できる
        3. 流通業者との取引が有利になる
      2. 弱み
        1. 戦力の分散化
        2. カニバリゼーション(共食い)や消費者の混乱を招く可能性
  5. 製品差別化戦略
    1. 製品の特徴
    2. 地理的ロケーション
    3. 製品の品揃え
    4. 他企業とのリンク
製品概念とは、マーケティングミックスを構成する4つの要素のうち、製品(Product)に着目したものである。またマーケティングにおける製品とは、消費者の問題を解決するためのベネフィット(便益)の束であり、消費者が使用・消費できる状態になったモノで、マーケティングミックスの根幹をなす最も重要な要素である。
製品概念はコトラーの製品概念・製品構造とレビットの製品概念・製品レベルに大別される。
 コトラーの製品概念・製品構造では、中核ベネフィットがあり、その外側にパッケージ、品質、デザイン、ブランドなどの製品の形態があり、製品の形態の外側に保証、取り付け、返品・返金、配送などの付随サービスがあるとされている。
 またレビットの製品概念・製品レベルでは、中核ベネフィットから外側に、基本製品、期待製品、拡張製品、潜在製品という風にレベルが上がっていくとされ、レベルが上がるごとに顧客の価値も上がるとされる。それぞれの製品レベルと顧客価値は5つのレベルに分けられる。まず中核ベネフィットは、顧客が自室的に入手できる基本的なサービスやベネフィットであるとされる。一段階上の基本製品は中核ベネフィットを提供する物質であるとされる。さらに一段階上は期待製品とされ、顧客がこう時に期待する一連の属性を整えた製品であるとされている。さらに第四段階は拡張製品とされ、顧客の期待を上回るベネフィットを提供する製品であり、差別化が生じるレベルであるとされる。最後は潜在製品とされ、製品に対して将来行われる可能性のある誇張や転換を全て含んだ状態のモノであるとされる。
以上のような製品は、形の有無と購買習慣という二つの軸から分類することができる。
 まず形の軸で製品分類をすると、変動性と消滅性のない有形財と変動性と消滅性のある無形財に分類される。さらに有形財は、複数回の使用に耐えうる耐久財と数回以内の使用で消耗する非耐久財に分類することができる。
 また購買習慣から製品分類をすると、消費者が頻繁かつ即座に最小限の努力で購買できる最寄品と消費者が購買過程で自身の思考、品質、価格などを基準に比較検討する買回品と独自の特性を持ち、消費者が特別な努力をして購買しようとする専門品の三つに分類可能である。
そして、企業はある製品が売れてくれば、そうした製品をもとに新たな製品を開発・販売しようとする。その時、どのようにして複数の製品を関係づけ、企業全体としての製品展開の方向性を考えていくべきかを決定する助けとして製品ミックスがあるとされる。ここで製品ミックスとは、特定の企業が販売するすべての製品アイテムの集合体とされ、製品ラインの「幅」と「深さ」という二次元の広がりを持つとされる。
製品ラインは、物理的特性、用途、流通経路、生産工程などが同一ないし、類似している製品の集合のことであり、製品ラインの幅はその企業が有する製品ラインの数であり、製品ラインの深さは一つの製品ラインにある製品アイテム数のことである。
 製品ラインを拡張する方補として、現在の範囲を超えて製品ラインの深さや幅を広げるライン・ストレッチング現在の範囲内にさらにアイテムを加えることで、製品ラインを充実させるライン・フィリングがある。 またライン・ストレッチングは低価格帯へのライン導入を意味する下級市場へ拡張高価格帯へのライン導入を意味する上級市場への拡張、上下双方へラインを導入する上下双方への拡張がある。
 製品ミックスを拡張することの強みとして、幅広い顧客への対応が可能になること規模の経済性を享受できること流通業者との取引が有利になることなどがあげられる。一方で、製品ミックスを拡張することの弱みとして、戦力の分散化カニバリゼーション(共食い)や消費者の混乱を招く可能性があるということが挙げられる。
以上の戦略の上に製品ミックスを拡張し、実際に製品を企画する際に企業は製品差別化戦略を設計する必要がある。製品差別化とは消費者が認知する競合他社の製品の価値に対して、自社の製品の価値を増大させることにより、競争優位を確保することである。製品を差別化する方法として、製品の特徴、地理的ロケーション製品の品揃え、他企業とのリンクがあげられる。
 製品の特徴とは、優れた品質や優れたデザイン、用途の広さなどの製品の客観的属性を操作することである。この方法は消費者の認知状の価値を変更させるために最も有効な手段ではあるが、製造コストや販売価格との調整が必要である。
 次に地理的ロケーションとは、便利な立地、製品の品質確保などの企業の物理的立地を調整することである。消費者から見た地理的アクセスのしやすさを考慮する方法であり、品質面での優位性が確保されるだけでなく価格面での優位性も確保できる。
 三つ目に製品の品揃えとは、ライン・ストレッチング、ライン・フィリング、ブランド拡張、などを行い、一つの企業で製造されるせ品ラインを拡張することである。消費者の利便性やコレクターの心理にも影響するとされる。
 最後に他企業とのリンクとは、共同開発やライセンス契約、ブランド・アライアンスなどの他社の資源を活用することである。この方法では、企業同士のネットワークの間でアイデアや人を結びつける架け橋として機能する存在である境界連結者の役割が重要になる。
以上のように、企業がせ品製品を開発する際には製品概念に基づいて、どのような分類の製品をどのように製品ミックスを拡張するかを決定し、差別化戦略を図りながら新製品を企画・販売していく。